人間が一生住む家は、職人が、心をこめて造り上げるものです。
そのために六ヶ月から一年はかかります。材料の乾燥からとなると、二年、三年かかります。
人生の一番大きな買い物である家は、そのくらいかけても、おかしくないと思います。
そして、その家が、何代も使われると、けして長い工期だとは思いません。少し大げさかも知れませんが、この仕事が文化財になるとすばらしい事かも?と思いながら作り上げています。

乾燥材、この言葉は、建築において最も重要な言葉なのです。いくらいい仕事をしてもどんなに良い材料を使っても乾燥材でないと,仕口に隙間ができてしまいます。
それが、家全体の弱さにつながります。しかしながら、私共の様に手刻みの手間を惜しまない職人が、少なくなりました。この事を、今現在不安に感じております。

なぜか人間は、京都、奈良の建物に惹かれます。何故でしょうか。それは、社寺仏閣の工法においても、現在の建築基準法に適さないからです。おそらく先人は、五重の搭を含む社寺仏閣、さらには家も地震で何回か倒壊したと思います。その経験を経て今の国宝、東寺が生まれたのだと私は思います。そして、これからの建物は、地球の上に置いた状態すなわち礎石の上に建てているのです。ですからこの時点で地球の揺れと建物の揺れを切っているのです。

しかし、現在の家は、地球に完璧に固定しています、はたしてこれが、地震大国、日本の建築のあり方でしょうか。

日本に四季があるのはご存知だと思います。冬の乾燥時期は、土壁と木材の湿気を少しずつ吐き出し、梅雨時期は土壁と木材が湿気を吸い込み、人間が快適に過ごせる様に調節してくれます。もともと木材は、野菜やくだものと同じ土と日光などの自然の中で生かされてきました。ですから、自然木材と土壁の中では人間は快適に暮らせるのです。

アトピー、杉花粉症などは,化学物質の中で暮らす現代病の一つであるともいえます。もちろん食べ物の影響もあるでしょうが・・・総無垢の家に住んで、喘息の発作が起きなくなったという人もいるように、化学物質の中で暮らすことが人間の体にとって良いことではないということはご理解いただけると思います。